[書評]ビジネスエリートになるための 教養としての投資

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「ビジネスエリートになるための 教養としての投資」書評

「ビジネスエリートになるための 教養としての投資」書評:これは、投資を「知の総合格闘技」と喝破する、ビジネスパーソンのための羅針盤だ。

「投資」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
「なんだか怪しい」「ギャンブルでしょ?」「一部のお金持ちがやるもの」。
もし、あなたがそう思っているなら、ビジネスパーソンとして大きな機会損失を被っているかもしれません。本書は、そんな「投資アレルギー」を根本から覆し、あなたのキャリアと資産形成に革命をもたらす一冊です。

基本情報

著者 奥野一成
出版社 ダイヤモンド社
出版年 2020年
ページ数 272ページ

著者について

著者の奥野一成氏は、農林中金バリューインベストメンツのCIO(最高投資責任者)を務める、まさに「投資のプロ中のプロ」。日本における長期厳選投資のパイオニアとして知られ、ウォーレン・バフェット流の投資哲学を実践する数少ないファンドマネージャーです。機関投資家として巨額の資金を運用してきた実績と哲学が、本書には惜しみなく注ぎ込まれています。

本の概要

本書は、単なる投資のテクニック本ではありません。投資を「企業のオーナーになること」と定義し、その思考プロセスがいかにビジネスパーソンの視座を高め、キャリアを豊かにするかを説く「教養書」です。短期的な値動きに一喜一憂する「投機」との決別を宣言し、企業の真の価値を見抜くための思考法を徹底的に解説しています。

特に心に突き刺さった3つのポイント

POINT 1

脱・指示待ち人間!「労働者2.0」へのススメ

具体的内容:
多くの人は、会社に雇われ指示通りに働く「労働者1.0」のままです。しかしこれからの時代、それでは搾取されるだけ。本書は、自らの才能を武器に主体的に働く「労働者2.0」への進化を促します。このマインドセットこそが、自分の資産をどこに投じるべきか、という投資家思考の第一歩なのだと。

印象に残った理由:
投資の話かと思いきや、いきなり「働き方」の核心を突かれてハッとさせられました。日々の業務をこなすだけでなく、「自分の価値をどう最大化するか?」という視点は、まさに経営者であり投資家の視点。投資とキャリアが地続きであることを痛感させられた部分です。

POINT 2

犬の尻尾(株価)に惑わされるな!

具体的内容:
企業を動物に例え、「利益が胴体で、株価は尻尾」という比喩が秀逸です。多くの人は、日々揺れ動く尻尾(株価)ばかりを見て騒いでいますが、本当に見るべきは、着実に成長しているかという胴体(利益)の部分。長期的に見れば、株価は必ず利益に連動すると断言しています。

印象に残った理由:
この例え話のおかげで、日々のニュースや株価の変動に一喜一憂することがいかに無意味であるかを直感的に理解できました。投資の本質は、企業の事業活動、つまり「胴体」をじっくり観察すること。この視点を持つだけで、世界の見え方がガラリと変わります。

POINT 3

永久に売らない会社を支える「3つの条件」

具体的内容:
では、どんな企業の株を買えばいいのか?その答えが、強靭な企業を支える3つの要素です。

  1. 高い付加価値:世の中に必要不可欠な存在か?
  2. 高い参入障壁:他社が真似できない圧倒的な強みがあるか?
  3. 長期潮流:人口動態など、不可逆的な時代の流れに乗っているか?

この3つのフィルターを通して企業を分析することで、投機ではない「本物の投資」が可能になると説きます。

印象に残った理由:
この3要素は、株式投資だけでなく、自分が働く会社の将来性を見極めたり、新規事業を考えたりする上でも極めて有効なフレームワークだと感じました。まさに「知の総合格闘技」。投資を通じてビジネスの本質を学ぶことができる、という本書の主張がここに凝縮されています。

評価

  • 評価1:単なるマネー本ではない。むしろ、骨太な「ビジネス戦略書」であり「キャリア論」である。
  • 評価2:著者の熱量と哲学が随所から伝わってくる。小手先のテクニックではなく、物事の本質を捉えるための「思考のOS」をインストールしてくれる。
  • 評価3:投資初心者から経験者まで、すべてのレベルの読者が新たな発見を得られる。特に、短期売買に疲れた人には特効薬となるだろう。

一方で、注意点

本書の主張は一貫しており非常にパワフルですが、それゆえに注意すべき点も感じました。

  • すぐに儲かる方法は書いていない:「明日から儲かる銘柄リスト」のような即物的な情報を期待すると、肩透かしを食らいます。本書はあくまで「魚の釣り方(思考法)」を教える本です。
  • 会計知識は別途必要:企業の価値を分析するには、財務諸表を読む力、つまり会計の知識が不可欠だと説かれています。本書はその重要性を指摘するに留まるため、実践するには自分で会計を学ぶ必要があります。

こんな人におすすめ

  • 「使われる」だけの人生で終わりたくない、すべてのビジネスパーソン:
    自分のキャリアの「オーナー」になるためのヒントが満載です。
  • 投資を始めたいけれど、何から学べばいいかわからない若手社員:
    最初の1冊として最適。間違った投資(投機)に足を踏み入れる前に、本質的な哲学を学べます。
  • 株価のアップダウンに一喜一憂するのに疲れた投資経験者:
    心の平穏を取り戻し、どっしりと構える長期投資の魅力を再発見できるはずです。

総合レビュー

本書は、「投資」というレンズを通して、ビジネスと人生そのものを見つめ直すきっかけを与えてくれる傑作です。著者の熱いメッセージは、私たち日本人が陥りがちな「お金の話は汚い」「汗水流して働くのが美徳」といった古い価値観を打ち破る力を持っています。

読み終えた後、あなたは日々のニュースの見方が変わり、自分が働く会社のビジネスモデルをより深く考察するようになり、そして何より、自身のキャリアを長期的な視点で設計したくなるはずです。

これは単なる資産形成の本ではありません。
あなたのビジネスキャリアと資産形成、その両輪を力強く回すための「エンジン」となる一冊です。ぜひ、手に取ってみてください。世界の見え方が、きっと変わります。

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