「年利5%を実現する 投資の教科書」
もはや「株式投資は貯蓄」である――。あなたの常識を覆す、資産運用の羅針盤。
著者: 伊藤 武
出版社: 総合法令出版
出版年: 2015年
ページ数: 208ページ
著者について
著者の伊藤武氏は、日米の金融業界で輝かしい経歴を持つ、まさに「金融のプロフェッショナル」。日本人で初めてニューヨーク証券取引所のスーパーバイザリー・アナリスト資格を取得したという経歴は、その実力の証です。UBS投信投資顧問の社長やあおぞら証券の副社長などを歴任し、世界の金融市場の表も裏も知り尽くした人物と言えるでしょう。
本の概要
「なぜ、日本人は投資でうまくいかないのか?」多くの人が抱くこの疑問に対し、本書は極めてシンプルかつ強力な答えを提示します。それは、「日本のいびつな投資環境」と「世界経済の成長に乗る」という視点の欠如です。
本書は、金融の専門家が個人投資家のために書き下ろした「資産運用の教科書」。小手先のテクニックではなく、長期的に資産を築くための普遍的な哲学を、具体的なデータと共にわかりやすく解説しています。
特に心に刺さった3つのポイント
日本の投資家は”手数料”で損をしている
具体的内容:
日本の投資信託の平均コスト(販売手数料+信託報酬)は初年度で約4.3%。一方で米国では販売手数料はほぼ撤廃され、信託報酬も平均0.75%程度。この差が、あなたのリターンを静かに蝕んでいるという衝撃の事実を突きつけます。
日本の投資信託の平均コスト(販売手数料+信託報酬)は初年度で約4.3%。一方で米国では販売手数料はほぼ撤廃され、信託報酬も平均0.75%程度。この差が、あなたのリターンを静かに蝕んでいるという衝撃の事実を突きつけます。
印象に残った理由:
「なんとなく手数料が高い」と感じていたことが、具体的な数字で示され愕然としました。銀行や証券会社がフロービジネス(販売手数料稼ぎ)に頼らざるを得ない構造的な問題まで踏み込んでおり、金融機関の言うがままに商品を選んではいけないと痛感させられます。
「なんとなく手数料が高い」と感じていたことが、具体的な数字で示され愕然としました。銀行や証券会社がフロービジネス(販売手数料稼ぎ)に頼らざるを得ない構造的な問題まで踏み込んでおり、金融機関の言うがままに商品を選んではいけないと痛感させられます。
最強の投資法は「世界まるごと」×「ドルコスト平均法」
具体的内容:
世界経済は年5%程度で成長を続けています。ならば、世界の株式市場全体に時価総額に応じて投資すれば、何もしなくてもその成長の恩恵を受けられる、という考え方です。さらに、パフォーマンスが最悪だったバブル崩壊後の日本市場ですら、毎月定額を積み立てる「ドルコスト平均法」を25年続けていれば利益が出ていた、という驚きのデータも紹介されています。
世界経済は年5%程度で成長を続けています。ならば、世界の株式市場全体に時価総額に応じて投資すれば、何もしなくてもその成長の恩恵を受けられる、という考え方です。さらに、パフォーマンスが最悪だったバブル崩壊後の日本市場ですら、毎月定額を積み立てる「ドルコスト平均法」を25年続けていれば利益が出ていた、という驚きのデータも紹介されています。
印象に残った理由:
投資のタイミングを計る必要も、個別銘柄を分析する必要もない。「ただ、世界経済の成長を信じて、淡々と積み立てるだけ」。このシンプルさと再現性の高さは、投資初心者にとってまさに希望の光です。専門家を上回る成果を出せる可能性を秘めている点に、非常にワクワクしました。
投資のタイミングを計る必要も、個別銘柄を分析する必要もない。「ただ、世界経済の成長を信じて、淡々と積み立てるだけ」。このシンプルさと再現性の高さは、投資初心者にとってまさに希望の光です。専門家を上回る成果を出せる可能性を秘めている点に、非常にワクワクしました。
株式投資はギャンブルではなく「本来の貯蓄」だ
具体的内容:
貯蓄とは「財貨を蓄え増やしていく行為」。ゼロ金利下の預金はインフレで価値が目減りするため、実は「貯蓄」とは言えません。むしろ、経済成長と共に価値が増えていく株式こそが、本来の貯蓄の役割を果たすのだという、常識を覆す視点を提示します。
貯蓄とは「財貨を蓄え増やしていく行為」。ゼロ金利下の預金はインフレで価値が目減りするため、実は「貯蓄」とは言えません。むしろ、経済成長と共に価値が増えていく株式こそが、本来の貯蓄の役割を果たすのだという、常識を覆す視点を提示します。
印象に残った理由:
「投資=怖い、ギャンブル」という日本人に根付いたマインドセットを、根本から覆してくれました。お金をただ寝かせておくことのリスクに気づき、資産形成への考え方を180度転換させるきっかけとなる、本書の核心的なメッセージだと感じました。
「投資=怖い、ギャンブル」という日本人に根付いたマインドセットを、根本から覆してくれました。お金をただ寝かせておくことのリスクに気づき、資産形成への考え方を180度転換させるきっかけとなる、本書の核心的なメッセージだと感じました。
評価できる点
本書の魅力は、その理論の「普遍性」と「再現性」にあります。出版から数年経っていますが、「世界に分散し、長期で、定額を積み立てる」という王道の哲学は、いつの時代も色褪せることがありません。具体的なデータに基づいた解説は説得力抜群で、投資の不安を払拭してくれます。
少し気になった改善点
素晴らしい本ですが、一方で以下の点は考慮が必要です。
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情報のアップデートが必要: 2015年の出版のため、NISA制度に関する記述が古いです(本書では年間100万円)。現行の新NISAは制度が大幅に拡充されているため、最新の情報は自分で調べる必要があります。
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具体的な商品名の提示は少ない: 理論は完璧ですが、「では、具体的にどのETFを買えばいいの?」という問いへの直接的な答えは少なめ。読者が次の一歩を踏み出すには、もう一歩自分で調べる努力が求められます。
こんな人におすすめ
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投資を始めたいけど、何から手をつけていいか分からない20代・30代
→ 最初に読むべき「投資の哲学書」として最適です。 -
金融機関の窓口で勧められるがままに商品を買ってしまった人
→ 自分が払う手数料の意味を理解し、ポートフォリオを見直すきっかけになります。 -
「貯金だけでは将来が不安…」と漠然と感じているすべての人
→ 預金のリスクと、世界経済の成長を取り込むことの重要性を学べます。
総合レビュー
本書は、小手先のテクニックに走らず、資産運用の「本質」と「王道」を教えてくれる“羅針盤”のような一冊です。
情報の古さという点はありますが、それを補って余りある普遍的な価値があります。投資という大海原へ漕ぎ出す前に、必ず読んでおきたい必読書と言えるでしょう。